タクシー運転手の名言「何もなかった」のが一番良かったのかもしれませんね

私のネクタイ

忘年会が続く中、やはりタクシーのお世話になることがしばしばある。
タクシーの中では眠くならない限り運転手さん(以下運ちゃん)にたわいもないことを話しかけるようにしている。

ただ、運ちゃんによってはたわいもないことを話しかけてくる人も、もちろんいる。

走り出してからしばし沈黙が続く車内で、私はこの運ちゃんは話しかけてこないタイプ(方針?)と判断し、たわいもない会話を試みた。

私「年末はどうですか?今年は忙しいですかね?」
年末にタクシーが忙しいのは分かりきっているが、軽く景気の動向的な回答を探る問いかけだ。

運ちゃん「そうですねー、例年より忙しい感じがしますね。」
そうか、なんとなく景気アップを運ちゃんは感じているようだ(個人の感想です)。

今度は逆に質問された。

運ちゃん「今年はどうでしたか?振り返ってみて。」

私はドキッとした。気の利いた回答をせねば!という焦りと、本気で振り返ってみて「そういえば何があったっけな?」というのが酔っ払った頭の回転数を急速に上げたからだ。

私「うーん、気がつけば年末だったって感じですかね…」

回答までおそらく1.5秒。頭の回転数の割に、大した答えは出てこなかった。
常に忙しく、何をやったかも覚えていないビジネスマンっぽい疾走感を演出した回答のつもりだったが、実際にパッと何も思い浮かばなかった苦し紛れの答えだということを運ちゃんは察したのか…。

運ちゃん「何もないっていうのが、一番良い一年なのかもしれませんね〜。」

何もないとは言ったつもりはないが、私の回答から「何もなかったんだな、この人。」というのを見事に見透かされた上に、なんとも含蓄豊かな返しのセリフにまたこちらの頭の回転数が上がってしまった。

特別何もない、という幸せ

人によっては、

「今年は結婚したんです!」
「今年は子供が生まれたんです!」
「今年は昇進したんです!」
「今年は合格したんです!」

と言ったことが真っ先に口から出てくる人もいるんでしょう。

一方で、
「ことしは母(父)が亡くなりまして…」
「ことしは子供が病気になりまして…」
「ことしは大病を患いまして…」
「ことしはリストラされまして…」

と言ったことが真っ先に口から出てくる人もいるんでしょう。

後者の場合、運ちゃんの「何もないっていうことがいかに幸せかと気づかされる」という言葉は私への思いやり溢れる対応となり、すんなりと腹落ちする。

私が前者の回答をした場合は、また違った会話の展開が予想されるが、オチとして「何もないことが一番良い」という最強必殺論破兵器はすでに用意されていることになる。

例えば私が、「今年は結婚したんです!」と息巻いて言ってきたならば、前途を案じて、
「これから長い夫婦生活があり、幾多の出来事や苦難を二人で乗り越えていくでしょう。その後にこう思う年が来ますよ。ああ、何もない一年が一番だねっていう日がね。」

と言った具合である。

私が、「ことしは大病を患いまして…」と回答していたならば、
「そうですか… 体は大事ですよね。健康が一番です。何も起こらず過ごせた年ってのは案外一番なのかもしれませんね…。」

完璧である。

あらゆる回答に対して完璧な答えを、運ちゃんは既に持っていたのだ。

いや、もちろん営業トークでしょう。

そうです。その通りかもしれません。この年末、運ちゃんは今日もどこかで、この問答を繰り返しているのでしょう。
自ら、お客さんに問いかけ、その答えは究極のものがもはや用意されている。

年末の定番営業トークなのです。

タクシー以外の営業の方にも既に使い古された技なのかもしれません。
知らなかった人は是非使いまわしてください(私も言わずもがな)。

タクシーが自宅に着く頃には私の頭の回転数は下がり、すっかり心は安堵していました。

「そっか、今年は何もなくて良かったんだ!」と…。

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About Ryosuke Yamaguchi

いつも次を考えているmaltimanこと山口良介です。maltimanというHNでネットには昔からいます。ホントノ株式会社の代表をはじめ、野良IT、みどりの鳥、みどりーむネクスト、などいろいろやっています。

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