と、いうのが現代のみんなの想いなんだろうなと、思いました。
ゴジラが現れてくれないと、日本は再建できないんですよ
あまたあるゴジラエントリーが、解説、批評、独断といった形で紹介されていますが、私が思ったのはこの1点でした。
きっと。
そして、その願いを叶えてくれる映画が「シン・ゴジラ」なんですよ。
それをリアリティをもって庵野監督は愛情たっぷりに描いてくれました。
私はエヴァンゲリオンを愛する1人ではありますが、その演出、画角、構成などはさて置き、「日本再建への希望はすなわちリセットだ」を描いた映画だったのだとつくづく思いました。
これは、ゴジラの破壊するルートが私の知っている地域であり、自分の脚で訪れた所が多かったというのも、そう感じる理由の一つなのでしょう。
最初に上陸した羽田から蒲田近辺。再上陸した鎌倉か、東京都心への進出をかけた自衛隊との白熱の攻防を描く「ムサコス」。
そして品川、丸の内という下り。弊社の東京オフィスは天王洲(ほぼ品川)、前職の場所が銀座一丁目(ほぼ丸の内)といったリアリティが、そのゴジラデストロイのリアルさをより身近にしたのです。
劇場を後にした各々の帰り際の遠く、もしくは近景にゴジラが暴れまくる姿を重ね合わせた人は多いのではないでしょうか?
現代におけるリアリティの欠如
明日布団、もしくはベッドから起きたら自分の出社すべき会社が木っ端微塵になっていたらと想像する輩です。
そう、それはすなわち日本社会の行き詰まり感を、究極生命体のゴジラが破壊してくれる。
リセットしてくれる!
と思って止まない輩が思ったよりたくさんいるということです。
かの福島でさえ、自分ごとに捉えている人はどれだけいるでしょうか? 今なお汚染処理と、復興への道のりを描けずに、そしてチェルノブイリ化が進む一部の地域。まるでなかったかのように処理問題はただただ先送りされているだけの現状。最近明らかになった自分の近くに放射性物質が保管されているという記事を見て、ようやく「あの問題」はまだカタがついていないのだという事実を目の当たりにする。
指定廃棄物を学校に“放置” 横浜市、5年以上もhttp://www.kanaloco.jp/article/180590
日本は過去、何度も実にヤバイ国難から再建しています。
恐らく他の国では、不可能だろうと思える再建を成し遂げてきています。
しかし、戦後の再建はあくまでも経済的再建であり、日本国民としての再建ではなかったように思えます。
福島からの再建は、あくまでも日本のイチ地方が損害を被っただけです。それは日本経済に与える影響としては少なかったのかもしれません。
(本当は甚大ですが、それを隠しているという意味でも経済重視の日本が垣間見えます)
このあたりは他エントリーにもあるので、割愛しましょう。
連合軍の採択した熱核爆弾の投下という東京壊滅必須の作戦を跳ね除け、自国で編み出した「ヤシオリ作戦」で、なんとか切り抜けたというとラスト。
ゴジラは「神の怒り」の化身なので、それを甘んじて受け入れようとする、凍結作戦のコンセプト。
怒りを駆除するのではなく、凍結(沈める)という考え。
そして、何よりゴジラが暴れ回り、破壊しまくった東京の再建への期待感。いや、もしかして首都東京は再建出来ず、首都をどこかに移転することによる、現状の東京経済一極集中への打破感…。
たしかに死ぬかも知れない
最初に血液凝固剤を注入する場面、恐らく官民複合で結成された「決死の実行部隊」が、ゴジラのビームで一瞬で殲滅されるあたり。
さらりと本編では描かれていますが、沢山人が死んでいること間違いなし。
もちろん、この作戦の実行において無傷はないのが前提ですが、結果として作戦は成功したのがせめてもの犠牲者への報い。
人が死ぬ描写が少ないのはエヴァンゲリオンからそうである。もっと民間人はたくさん死んでいる。東京の人は例の全方位レーザー、および火炎放射で相当死んでいるはず。
しかし、エヴァンゲリオンの世界では避難するのが当たり前だし、避難設備も充実している。
なのでシン・ゴジラより民間の被害者は少ないと思われる。
なのだ、主軸で描かれる官邸よりも、シン・ゴジラはガンガン一般人は死んでいるはず。
その描写がないのは、単に予算がない、というのと、本筋ではないというのが大きな理由ではないか?
でも、いいのです。
明日出社するべき会社がなくなる代わりに自分の命も無くなるかもしれない
という緊張感が現代には決定的に足りない(そりゃそうだ、東京でテロでも一発起きればその考えは変わるでしょう)。
そして、観た人はそれを欲してしまったのです。
それはすなわち、「生きている」という実感が欲しいという裏返しなのです。
夜寝るときに、果たして何人が明日朝五体満足で目覚められるだろうか?と考えているでしょうか?
その「生(性)」に関する欠乏感を庵野監督のシン・ゴジラは思い起こしてくれたのです。
そして、それが現代社会において最大の問題なのだと庵野監督、いや、ゴジラは思い起こしてくれるのです。
それが支持される理由のひとつなのではないでしょうか?
明日起きたらゴジラに破壊された世界が目の前にある。
しかし、それは絶対に起きません。
ゴジラは虚構ですから。
破壊はあなたの心の中で起きるのです。
あなた自身が現実を破壊しない限り、いつもの、冴えない朝がお出迎えするでしょう。
Good Morning!
ゴジラはあなたの心の中にしか現れないのです。